星くずインターセクション

平凡なものを不滅にするってすごくクールだ◝✩

Love wins all/私たちは愛が勝つと知っている

 

 

ところで、“Love Wins”という言葉を知ってる?

 

日本語にすると“愛は勝つ”。

極めてシンプルで、しなやかな強さと豊かさが伝わってくる。今日はこの言葉“Love Wins”をキーワードに、ぜひシェアしたいことがあるんだ :)

 

❤️‍🔥

 

話のきっかけにしたいのは、韓国のシンガー・ソングライター、IUが2024年1月24日にリリースした最新シングル「Love wins all」のこと。世界中で大人気のアーティストだし、話題になった楽曲なのですでに聴いた人もいるかもしれない。

 

タイトルの通り、この曲のテーマは愛。さまざまな解釈を呼ぶ映画のようなMV(大事なメッセージがあるので、後半で詳しくふれるよ)も相まって、聴く人(観る人)それぞれが想う愛を感じることができると思う。リリースされた瞬間からずっとリピートしている私は、もう何回再生したかわからないくらい!

 

「Love wins all」をSpotifyで再生しているiPhoneのスクリーンショット。楽曲のイメージビジュアルが映し出されており、モノクロの背景にピンクの文字で曲タイトルが手書き風フォントで描かれている。

 

実はこの「Love wins all」。リリース直前の1月19日になって、タイトルが変更された。その変更前のタイトルこそが“Love wins”だった。すでにリリースに向けたプロモーションも始まっていたし、本当に異例のことだったと思う。それでもタイトルを変えたい、変えなくてはならない理由があった。

 

最初の質問に戻るけれど、これを読んでくれているかもしれないあなたは“Love wins”という言葉を耳に、もしくは目にしたことはありますか? この言葉は“愛は勝つ”という意味以外にも、重要なメッセージを持っている。

 

2015年6月26日にアメリカ全土で同性婚が合法化。当時のSNS“#Lovewins”というハッシュタグを添えた投稿であふれた。この頃を機に、“Love wins”は、LGBTQIA をはじめとするセクシャルマイノリティの人々にとって大事な言葉になり、全員が当たり前に等しく持っているはずの“愛”の権利を主張したり、祝福したりするため、つまりは人権を守ために使われるシンボリックなキーワードになったそう。セクシャルマイノリティたちの“ため”の言葉とも言い換えられると思う。

 

そんな大切な言葉。この言葉を当事者ではないIUが歌う楽曲のタイトルに用いること。ここに懸念や疑問が生まれるのは当然なような気もする。中には怒りや悲しみを抱いた人もいたかもしれない。そして、このことに声を上げた方たちがいた。「言葉を奪わないで」と言った人たちがいた。そしてその声は、届いたんだ。

 

「Love wins」から「Love wins all」へ楽曲名を変更すると発表があったとき、IUの所属事務所がコメントをだした。

 
 
 
 
 
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この曲のタイトルによって重要なメッセージが曇ることを憂慮する意見を受け入れ、多様な姿で愛して生きていく皆をより尊重し応援しようと思います。

発売される曲に込めたメッセージと最も反対になる地点の言葉があるとすれば、それは「嫌悪」でしょう。

これは、18日に公開されたトラックのイントロでも詳細に言及されました。
嫌悪のない世の中ですべての愛が勝つことを、誰にも傷つかずにこの曲の意味が伝わることを心から願っています。

EDAM ENT Official Instagram 2024年1月19日の投稿から一部抜粋し、Papagoにて自動翻訳

 

愛は勝つ”というメッセージは“Love wins”という言葉を使わなくたって、十分に表現することができる。私は、この一連の流れを後々に知って、“力”を持っている人たち(今回の場合は、セクシャルマイノリティでない人、世界的に影響力があるアーティストという立場の人、そしてそのサポートをする会社)の対応に少なくない安心感を覚えたし、“愛は勝つ”のほんとうの意味にほんの少しちかづけた気がした。

 

🫶⟡.·

 

この曲が伝えたかったことーー。

 

冒頭で、「Love wins all」のMVについて少し触れたのだけれど、最高なのでもしよければぜひ実際に観てみてほしい。私が大好きなBTSのVも出演している! 私なりの解釈もいくつかあるのだけれど、映像監督をつとめた엄태화(オム・テファ)さんが公式に解説しているので、それを引用しながら、この楽曲に込められた想いと、社会へ、世界へ届けたいメッセージについてもみんなにシェアしたい。だって、このメッセージに私は大いに賛同しているから。

 

といっても私は韓国語が堪能ではないので、翻訳サイトにお世話になりながら……!(私は映画の考察とか読みながら視野を広げたり、解像度をあげて理解度を高めるのが好き)。

 

❶MV冒頭から登場する謎の「四角⬜️」

2人を執拗に追う「四角」の正体がファンの間で最も意見が分かれる。(中略)「四角」は主人公に向けた差別を意味し、さらに私たちの日常で蔓延した各種差別と抑圧などを意味すると解釈されることもあるだろう。

아이유의 웨딩드레스와 BTS 뷔의 턱시도, 뮤비 해석 가이드 보니 から一部抜粋しPapagoにて自動翻訳

 

❷キーアイテム「ビデオカメラ📹」

映像の中の時間背景は現在だが、ビデオカメラに撮られる画面の設定は廃墟になる前の何ともなかった世の中だ。 ビデオカメラのレンズは、すなわち「愛のフィルター」を意味する。 また、人物の内的または外的な姿を越えて世の中の美しいものを眺められる重要な装置と見ることができる。

아이유의 웨딩드레스와 BTS 뷔의 턱시도, 뮤비 해석 가이드 보니 から一部抜粋しPapagoにて自動翻訳

 

 

❸主人公たちの姿👫

「話せない人と左目だけで世の中を見る人のディストピア世界の生存記」とも見られるこのMVには色々な象徴が存在する。IUの唇を詳しくみてみるとチェーンが小さくかかっているが、これはすなわち世の中と完全に疎通するのに困難があることを意味する。 Vも左目に白色のレンズを着用し、一目で見ても2人が世の中の難関を乗り越えていくのに多くの困難があるものと見られる。 それでも彼らは「四角」から廃墟になってしまった世の中に、お互いをより一層頼るほかはなく、各自傷を負って疲れた状況でも最後まで勝ち抜こうと思う。

아이유의 웨딩드레스와 BTS 뷔의 턱시도, 뮤비 해석 가이드 보니 から一部抜粋しPapagoにて自動翻訳

 

❹どうしてウェディングドレスとタキシードなのか?👰🤵

ここでウェディングドレスとタキシードは最も常套的といえる「愛の結実」を象徴する。 MVで2人はこの服を着て、写真を撮り、歌を歌いながら楽しく遊ぶなど、これまで日常でできなかったことを一緒にしながら、少しでも幸せを味わう。

だが、ついに「四角」によって肉体が消滅し、彼らが羽織っていた「服」だけが残ることになる。 2人は最後のビデオカメラ画面で空中に浮び上がることが暗示されるが、これはあらゆる抑圧と圧迫から抜け出し自由に飛んでいけることを意味する。 決定的に空から落ちるドレスとタキシードは現実で意味があり重要だと思われる形式が果たして、本当の本質を見せてくれるのかについての質問を投げかけるという意味も内包する。

아이유의 웨딩드레스와 BTS 뷔의 턱시도, 뮤비 해석 가이드 보니 から一部抜粋しPapagoにて自動翻訳

 

MVの主人公たちは社会的な抑圧や圧迫を受けている人たちの象徴であり、そういった社会制度や構造、今の世の中の在り方じたいが障害になっている方たちの愛も例に漏れず、全て等しく尊重されるものだという"あたり前"のことを示している。

 

周り(私たち)から認められる/認められないということに関わりなく、"あたり前"の幸福を享受する権利があるし、愛し合うことにとやかく言う権利を周り(私たち)は持っていない。

 

抑圧を受けている人たち、現社会が障害になっている人たち、マイノリティ、さまざまな表現で示すことができると思うのだけれど、そうした方々のために、私は日頃、どれだけ心を寄せられているだろう。どれだけ行動を起こし、どれだけ考えをめぐらせ、ともに戦えているだろう。そして、私はどれだけ障害なく生きられていて、抑圧を受けずに済んでいて、“あたり前”に愛するということをしているんだろう。この曲を聴くと、私は否が応でもじぶんじしんの暮らしや生き方そのものをかえりみる。全ての愛を尊ぶということ。この権利をみんなが獲得(当然にあるものだから、この表現もちょっとおかしいけれど)するためには、やっぱり、手を取り合って、マジョリティも力を持つものも一緒になって戦って、進んでいくことでしかありえないんじゃないかって考えたりもする。そんな考えをめぐらせるチャンスをくれた「Love wins all」が私はとても好き。

 

ただここでもう一つ残しておきたい私の考えががある。この楽曲(曲自体とMV)がさまざまな在り方で、方法で愛する人たちを応援したい、してくれるものなのだとしたらーー。

 

MVの中で、話せない(手話を使っている)人を演じるIU、左目が見えない人を演じるV。この2人は役の特徴を持つ当事者ではない。はたして、社会が障害になっている人たちの役を当事者以外が演じることじたいに疑問を持たなくていいのだろうか? そしてそのストーリーを私たち(マイノリティではない人たち)が感動物語として簡単に、単純に鑑賞してしまって良いのだろうか......と。

 

違和感ともやもや。

 

私はこのMVを観た時、確かに心震え感動したし、涙も流した。でも次第に、不安や恥ずかしさみたいなものが込み上がってきた。マイノリティの役をその当事者である人達が演じる映画やドラマ作品が増え、それをスタンダードにしていく流れがある中で、やっぱり私はこの演出のすべてを素晴らしく美しいものとして受け入れてはならないんじゃないかって思った。

 

これじゃあ、結局おんなじことの繰り返しになってしまう。

 

音楽と社会は繋がっている。この曲の制作に関わり、美しく歌うIUのことが私は大好きだし、この曲も愛したい。すべての"愛は勝つ"という言葉が、曲がもつ本当の意味をちゃんと受け取りたい。だからこそ、私は考えることをやめずにいたい。そして私自身のマジョリティとしての側面、もっている力を使いながら、当事者の声を奪うことなく、物語としてむやみに消費せずに、模索しつつも進んでいきたい。“愛は勝つ”あたり前の社会へと変えていきたい。

 

"Love wins"、そして"Love wins all"

ひとりでもともに進む仲間が増えたなら、すごく嬉しい。

 

⋆⸜ ❤️🧡💛💚💙💜 ⸝⋆

 

今夜のBGMは「Love wins all」と一緒に再生したい曲たち。愛がテーマの音楽って星の数くらいあるから、特に今の私のムードにフィットするものをピックアップしたよ↓

open.spotify.com

 

おやすみ金曜日

明日、少しでも悲しみが少ない世界に出会えますように

それでは、きょうはここまでーー

 

 

 

 

(2024.1.26)